20081225

あの娘はハデ好き


http://www.youtube.com/watch?v=6P3i79G82PM&fmt=18

あの娘は 派手好き 青山のマンション
だけど 日曜日の午後 電話が止まった

毎年ハワイに行く
彼女は小麦色
日本人らしくないね
金髪のロングヘアー
遊ぶだけならば都合がいいけど
恋人にはできない
彼氏が笑った

あの娘は派手好き いつも厚化粧
だけど素顔が一番 輝いているよ

毎日 朝は弱い 男にはもっと弱い
流行りモノには敏感
お勉強トンチンカン

遊ぶだけならば都合がいいけど
親友にはなれない
彼女が笑った

あの娘は派手好き
友達がいっぱい
だけど入院したとき
来たのはママだけ

あの娘は派手好き
全身シャネル
だけど日曜日の午後
質屋を出てきた

あの娘は派手好き
ピンクのポルシェ
だけど日曜日の午後
レンタカー返した

あの娘は派手好き
いつも楽しそう
だけどクリスマスの夜
寂しくすごした

「あの娘はハデ好き」1994年(作詞:飯島愛/作曲:小倉良)

  ★  ★  ★

飯島愛で印象に残ってるのは、たまたま見ちゃったギルガメの「卒業式」で。後輩の女の子に花束もらいながら「みんな、頑張ったよね! オシリ出して恥ずかしかったけど、番組をよくするために頑張ったんだよね!」って声かけながら歩いてるという図。書き起こすと“AV女優がなにをいまさら”感プンプンだけど、なんとなく厳粛な気持ちになったのを覚えてる。

前掲の曲は、当時テレビで聞いたきりだったけどずっと好きだった。ドリカムや広瀬香美のイイ曲級のイイ曲に、自虐的なユーモアとペーソス。本人作詞と知ったのは最近だ。それにしてもそのラスト2行は……

飯島愛さんのご冥福をお祈りします。

 

20081120

P.R.O.M. #34



今週末23日(日)はP.R.O.M.。3カ月周期にしたらなんか久々感がありますが。

今回ゲストは、僕の大学時代からの友人でもあるtwistedこと坂本寛くんです。
最近は音楽の分かるアキバ系ライターとして、『アニソンマガジン』(洋泉社)や近刊『テクノ歌謡ディスクガイド』(扶桑社)とかでも健筆を振るわれております。ビクターの名作渋谷系アニソンコンピ『AKSB〜これがアキシブ系だ!〜』のライナーも彼ですね。
今回はずばり、

「アニソン、ゲーソン、ニコニコ動画、ピコピコみたいな」

といったあたりで、アキシブ系よりさらにガチな、いま旬なあたりが期待できそうです。
音楽に驚きを求めたい人におすすめ(笑)。
20:30から1時間のセットになります。

DJとかやるのも久々らしいので、かつての渋谷系レコードマニア時代を知るお仲間も集まっていただけると非常によろしいんではないでしょうか。

P.R.O.M. #34 http://prom.rickdom.com/

2008/11/23(Sun)18:00~23:00
@三軒茶屋DJBAR Chrome http://chrome.shine.jp/
世田谷区太子堂4-29-1 B1(※ソフトバンクの店の隣地下)
03-3418-1140
1500yen w/1drink
DJs:junne, omo*8, tag

ゲストDJ:坂本寛 a.k.a. twisted(tabloid/アニソンマガジン)

mixi内コミュニティ http://c.mixi.jp/prom

20081009

Bangkok Impact

■なんか間空きすぎて何から書いていいやらですが、Lilmag blogで触れられたので更新するか。そうそう野中モモさんのマンガ紹介同人誌『少女と少年と大人のための漫画読本 2007-2008』のオマケ小冊子にコメントさせてもらってます。というかメッセンジャーの会話を「これ使っていい?」と聞かれたのでその場で安請け合いしたのだが、届いた現物を見てどっちかというと後悔した。本当に、市井のマンガ有識者のみなさんの熱烈・的確・面白コメントだらけで、普段まったくマンガを読まない俺の生温いコメントが浮いていた……。でもこの本のおかげで面白い作品に出会えたのはありがたくてちびちび参考にさせてもらってます。『キャノン先生トばしすぎ』とか(そこかよ)。たぶんマンガを熱烈に好きか、逆にぜんぜんマンガに馴染みのない俺のような読者にこそ響く魅力的なレビューだらけなので、気になる方はぜひどうぞ。

■9月末にタイに観光に行きました。現地の友人ご夫妻に全面的にお世話になり約1週間。ホアヒンという海辺の街とバンコク市内。政情不安で9月アタマには非常事態宣言とか出ててどうなることかと思ったが、行ってみたら特に危険なサインもなく。とりあえず食い物はなんでもうまい。うまくて安い。屋台だと4人でたらふく食べて200バーツ(約600円)とかそういう世界。

■サイアムっていうバンコクの原宿みたいな場所でCDもちょこちょこ買ったんだけど、一番よかったのはSweet Nujかな。石川秀美似の少女のストレンジなジャケに異様に惹かれたのと、売り子の「64歳のおばあちゃんの初デビュー作」との解説で購入したのだが、これがタイのブロッサム・ディアリーというべきオールドタイミー盤だった。かわいいです。



■デパートとかは日本と一緒。プラダとかグッチとか海外ブランドがこぎれいに並んでる感じ。サイアムの隣の駅のマーブンクロン(MBK)っていうデカいショッピングセンターはなんか雑多な感じで面白かった。4階がデジタルコーナーで、携帯電話屋が一面に……。合間にあるコピーDVD屋では韓国・台湾のドラマが人気でした。日本のアイドルやドラマもあったけどやや勢いで劣った。聞いた話だと、台湾のドラマは全部撮影し終えてから放送開始して、出演者がアジア各国回るらしくて、日本のドラマも国内で消費してないでアジア巡業真剣にやったらよいのではないでしょうか。

■夜遊びとかはしなかったのだが、唯一それっぽい場所としてはSoi Music木村君のおすすめでエカマイのHappy Monday Barに行った(写真)。Moderndogっていうタイのオルタナ人気バンドのメンバーがショッピングセンターの一角で経営してるカフェバー的な店なんですが、行ったらハシエンダの斜めストライプが目に飛び込んできてびびったよ。Happy Mondayってそれか! 東京で言うと代官山とか中目黒っぽい感じ、かね、オープンエア席あってDJブースにDJがいて。客のお洒落レベルがもうサイアムどころじゃなくて、みんな若くて。でもギョーカイ感というよりアッパーミドル感、学生感。行ったときはなんか襟付きシャツのDJが泣き虫ニューウェイヴィー・ディスコかけてて、ダフト・パンクが2曲くらいかかってた。



■書いてたら疲れてきたので近況手短に。テレビ視聴計画。10月期は「かんなぎ」が楽しみ。初回もなんか「萌え」じゃなく何度も見れる感じ醸し出してて期待です。たまたま見た「とある魔術の禁書目録」も初回よかったので継続視聴の予定。土曜26時のホイチョイ(!)の実写/アニメ「絶対やれるギリシャ神話」はなんか期待したより(期待したのか)ショボかったので、今週から同じ時間帯はTVKで「ケメコデラックス!」を録画することにします。低身長ツンデレ釘宮枠の「とらドラ!」もじわじわ見てしまいそうです。

■って全然近況じゃない。タイから帰りの飛行機で読んだ和久井光司『『at武道館』をつくった男 ディレクター野中と洋楽ロック黄金時代』面白かった。チープ・トリックやクラッシュの日本盤を手がけたCBS・ソニー/EPICソニーの洋楽ディレクター、野中規雄氏の聞き書き伝で、成功が相次ぐ「日本洋楽」黄金期の景気のいい話もさることながら、個人的には80年代のG.I.オレンジを仕掛けた話や中西俊夫のMELONをデビューさせた話にヘェーっと。

20080823

P.R.O.M. #33

■ごぶさたしてます。

■明日の24日(日)、三軒茶屋でP.R.O.M.です。ゲストには安田理央さんをお迎えします。『エロの敵』などのご著書で知られるライターさんでもあり、84年から続くバンド、モデルプランツのリーダーでもあります。80sニューウェーブ・ファンク系を中心にアイドル歌謡やネオアコまで、何が出るのかおたのしみ。ブログを読んだら、映像も仕込んでくださってるそうで、へんなAV(こんなのとかこんなのとか)に興味ある方もぜひどうぞ。
P.R.O.M. #33 http://prom.rickdom.com/

2008/8/24(Sun)18:00~23:00
@三軒茶屋DJBAR Chrome http://chrome.shine.jp/
世田谷区太子堂4-29-1 B1(※ソフトバンクの店の隣地下)
03-3418-1140
1500yen w/1drink
DJs:junne, omo*8, tag

ゲストDJ:安田理央(モデルプランツ)

mixi内コミュニティ http://c.mixi.jp/prom

エロの敵 今、アダルトメディアに起こりつつあること (NT2X)

20080603

memorabilia


■遅ればせながら先々週のP.R.O.M.ご来場ありがとうございました。もぐ彦さんの選曲、意外と言ったら失礼ですがKon KanとかOMDとかキュンとくる線で普通に大好きでした。あと、おめでとうございました。

ヤマグチノボル『ゼロの使い魔14』
前巻最後の強力な引きで「ラストスパート入ったかな?」と思ったら、意外にあっさりサイト帰ってきた。しかも新キャラが出て大戦争も始まっちゃった。ブリミル登場ってのは、ハルケギニアの壮大な歴史に閉じる方向なのか、現代日本と意外なリンクを見せてくのか、個人的には後者に期待ですがどうなるでしょうか。

堀道広『青春うるはし!うるし部』
Lilmagマンガ読本で気になったのをツタヤで買って読んでみた。変なの……。モンタージュのショック(コマからコマへの飛距離)だけが原理のようなすごいいびつな物語り。作者はほんとに漆職人だそうで、随所に唐突にはさまれるうるし蘊蓄の「手を抜かなさ」も、単なるデタラメ以上の個性になってた。好き、かも……。

microstar『microstar album』試聴
やっと出た1stアルバムが衝撃的なよさ。ソフトロックやウォール・オブ・サウンドの模倣、ということで大瀧/ナイアガラサウンドが引き合いに出されてたりもするけれど、もっとこう、サウンド的な実験だけじゃなくて、日本でぼんやりポップスを聴いて来た全身体の蓄積に訴えるナニカが確実にあるという感じ。Pちゃんこと飯泉裕子さんのファニーな歌声の魅力のたまものですな。

■ここ1カ月くらいで買って聴いてるCDはGonzalesとかJamie LidellとかHarley & Quinとか。あと、まだ出ていないが80_pan(旧・ハレンチ☆パンチ)の「ニューレイヴ」展開、多少意地悪な興味で試聴したら悪くないというか、Perfumeフォロワーっていうよりはむしろふつうに推定少女的な、歌謡オルタナ心に触れる感じでたいへん反応に困る。買ってしまいそうで。「放置民」なんてPuffyのバックでJ.J. Burnelが弾いてるみたいです。

女性芸能人の歯
その名の通り矯正過程を写真付きで解説している歯科フェチのひとのサイト。なんかいろいろとすごい。

20080525

ピンク映画のピンク色



本日(日曜)夕方から三軒茶屋でP.R.O.M.

ゲストにパン山もぐ彦さんが急遽決定(a.k.a. DJチンコピアス)。
赤痢とガバを交互にかけてた……との目撃情報は伝え聞いておりますが、今回はいったい何をかけてくれるんだろ?

僕も三十路ごころに訴える選曲でがんばります。

20080520

P.R.O.M. #32



今週末25日の日曜日は恒例のP.R.O.M.。よろしくおねがいします。
ロックを中心にいろいろ。フリーペーパー『P.R.O.M. mag』#6(通算7号目)も配布の予定。
P.R.O.M. #32
サイト:http://prom.rickdom.com/
mixi内:http://c.mixi.jp/prom/

5月25日(日曜) 18:00〜23:00 
@三軒茶屋Chrome http://chrome.shine.jp/
DJ:tag,junne,omo*8
1500円 w/1d

五月革命



今見るとなんかものすごい健康美というか(田舎臭いともいう)(いい意味で)。

20080412

"Heroes"




「いまさら」のおすすめって効くときは効くよね、それってよっぽどよかったってことだから。

  ★  ★  ★

tagさんがうっかり『コードギアス 反逆のルルーシュ』が面白いとか言ってたせいで、今週後半はそれ見て過ぎました。今期始まった2期じゃなく1期の方。

近未来日本がブリタニア帝国の属領となったパラレルワールドもので、ブリタニア王子でありながら王への憎しみから結果的に日本解放戦争に突入するルルーシュが主人公。

国家対国家の戦争でもなく、民族性に基づいたテロという名のプライド争いでもなく、「憎しみの連鎖を断ち切る」「強者による弱者への暴力すべてへの抵抗」とのデカい理想をぶち上げて戦うルルたんがいまどき珍しい二枚目キャラを貫徹してて素晴らしい。結果的に親族や親友との対決、望まないジェノサイドに巻き込まれていく絶望的な展開も熱すぎる。

それでいて学園ラブコメなの。脚本スゴすぎ。

こんなこと言うのも野暮だけど、ルルーシュのイメージソースの一つは、男も濡らすデヴィッド・ボウイ先生じゃないかしらん。一話のラスト、瞳を見たものを絶対服従させる「ギアス」という名の超能力を授かったルルが一発逆転をしかける大一番で、思わず「"Heroes"」のPVを思い浮かべました。見終わった今、余計にそう感じる。勝って勝って勝って、その都度のエクスタシーもあって、でもまったく幸せになれない敗北感。左右の目がちぐはぐな設定もボウイだね。



David Bowie / "Heroes"

君が泳げたらいいのにな
イルカみたいに、イルカが泳ぐみたいに
もう何も もう何もないんだ 僕等を繋ごうとするものはね
だけど 僕等は永遠に打ち負かし続けることが出来る
ああ 僕等だってヒーローになれる たった一日だけなら

僕は、僕は王様になるよ
そして君、君は王女になるだろ
奴等を追い払うことは誰にも出来ないんだ
だけど 僕等だってヒーローになれる たった一日だけなら
僕等は僕等自身になれる たった一日だけなら

僕は、僕は思い出すことが出来る
立ってたんだ 壁の前に
銃が打ち抜いたね 僕等の額を
そして僕等はキスをしたんだ
キスしてる間に
誰も堕落しないように
恥辱は 奴等のほうにあるのさ
僕達は 奴等を打ちのめすことが出来る 永遠に 永遠に

ああ 僕等だってヒーローになれる たった一日だけなら
僕等はヒーローになれる
僕等はヒーローになれる

僕等はヒーローになれる
たった一日だけなら
僕等はヒーローになれるんだ

(日本語対訳 菊地成孔)


  ★  ★  ★

今週スタートした2期『コードギアス 反逆のルルーシュR2』は日曜17時のTBS系。楽しみになって参りました。

20080321

P.R.O.M. #31



今週末23日の日曜日は恒例のP.R.O.M.。よろしくおねがいします。
ロックを中心にいろいろ。フリーペーパー『P.R.O.M. mag』#5(通算6号目)も配布の予定。
P.R.O.M. #31
サイト:http://prom.rickdom.com/
mixi内:http://c.mixi.jp/prom/

3月23日(日曜) 18:00〜23:00 
@三軒茶屋Chrome http://chrome.shine.jp/
DJ:tag,junne,omo*8
1500円 w/1d

20080318

チェルフィッチュ『フリータイム』

チェルフィッチュの新作を日曜日にSuperDeluxeにて鑑賞。前作『エンジョイ』のチラシにあった岡田利規本人による素晴らしい惹句が、時間差で形になったような作品だと思った。
彼らがそして私たちが置かれている、このような社会条件下であっても、彼らはそして私たちは、なんであれ与えられた生を楽しんでよいし、楽しんでるその仕方を肯定してよい。その仕方を矮小と感じてしまうことなく楽しみ続けることが難しく思われるときがたとえあったとしても、「楽しんでいる」と明言してよい。

そして年長フリーター問題を正面から扱った『エンジョイ』は、切実ではあったけど、エンジョイの肯定ができていたわけではなかったように、いまは思える。

『フリータイム』は、就業前の30分をファミレスで落書きしながらだらだらする「自分だけの自由時間」と決めている派遣社員の女の子と、ウェイトレスの西藤さんという子の、潜在的な連帯を描いたプロレタリア演劇(!)、だと思う。「このまま1時間でも2時間でも居座って、しれっとした顔で遅刻してってても、じつは何も言われないんじゃないか」「むしろ、そういう時間って大事だよね、って奨励されたりするんじゃないか」……むろん、彼女が意図的に遅刻する日は来ないだろう。でも自ら由る(自分で使い方を決める)30分があればやっていける。

チェルフィッチュを観に行くのは、自分たちの生活についてちょっと突っ込んだ話を聞きにいく、という感じに近い。戦争と性と自意識の問題が入った『三月の5日間』はキャッチーだったけど、むしろ港北ニュータウンで子どもを作ろうかどうかと悩んでる若夫婦の話だった『ポスト*労苦の終わり』『目的地』の濃密な地味さをこそ我がことのように見てしまったし、年長フリーターや派遣社員が日々の不安を吐露する『エンジョイ』にも涙した。どれもこれも、30がらみの自分たちの小心な暮らしが驚くほど克明に(つまり忘れてしまうような細部までが)描かれていると感じられるし、そのこと自体に希望をもらえるという感じがする。

例によって、一つの役を複数人でリレーしていくような独得の脚本・演出。これによって、かえって友達の駄話を聴かされるときと同じような熱心さと気散じの同居した状態で耳を傾けることができるんだから妙なものだ。「こういう話があって」と出来事について語るスタイルと、役になりきって再現的に演じるスタイルとを自在に行き来する、洋風に言えばブレヒトとスタニスラフスキーの止揚、和風に言えば「落語っぽい」手法。チェルフィッチュというとこの形式的な特殊さが注目されがちだけど(そしてそれは相変わらず面白いけど)、それも上述のような「話の内容」に専念できる状態を作り出すかぎりにおいて賞賛されるべきな気がする。

上演では、ウェイトレス西藤さん役の安藤真理がよかったのと、派遣社員女子役をほぼ2人1役で演じたチェルフィッチュの看板女優・山崎ルキノと初登場の伊東沙保の対称がきいてた。特に2幕に入って、それまで関係なく進んでいた複数の流れにメタレベルで注釈がはじまり、ウェイトレスが女子に「遅刻しても実は結構大丈夫じゃないですか」とか話しかけはじめるのはかなり感動させられた。想像上ではあれ、働く者同士が同じ気持ちを共有し連帯を果たした感があって。またそのときの女子役が(いかにもマイペースを崩さずかっこいい山崎ルキノではなく)窮屈そうな伊東沙保で、「はいっ、はいっ」といかにもかしこまった受け答えをしている感じもよかった。店員なんかにいきなり話しかけられたらそうなるに決まっているからで、でもそこになにがしかの心の交流はある、というか。さらにその直後、たぶん現実の二人にとって唯一の会話であった注文取りのマニュアルトークを、山縣太一と足立智充が「泥水飲んだことありますか」とかいってバカバカしく変奏しはじめるに及んでは、けっこうストレートな社会派ぶりに胸を熱くさせられた。

まあそういう熱さも、彼ら独得の、俳優たちが終始その場で言葉を選びながら話している感じ(に見せて全部脚本)という温度の低い語りがあって成り立つというか。勇ましい抵抗のスローガンが政治的なわけじゃないよな、というか。と思って帰りにパンフレット買って岡田利規のインタビューを読んだら、あまりに的確にそのことを解説していて、始まる前に読まなくて本当に良かったと思った。ある種のネタバレだ、あれは。

20080315

計画するということの新しいかたち

カラダカフェ  からだをとりまくかたち

手塚夏子 × 中山英之(建築家)

http://natsukote-info.blogspot.com/

日時|2008年3月15日(土)14:30開店 15:00スタート
場所|門仲天井ホール

建築家の中山英之さんからお知らせをいただいたトークショー、直前(本日)となってしまいしかも自分が行けないことが判明し申し訳ないのだけど、面白そうなので告知。以下、主催のダンサー・手塚夏子さんによる紹介。「必然的で自然に感じる、当たり前に受け入れられるような空間を見いだすために、膨大な試行錯誤を乗り越えて現実の形を立ち上げるという中山氏。その根底には関わりに対する繊細な感覚があるのではないだろうか?私が現在取り組んでいる「関わり」の観察と重なり、深い興味を駆り立てられます。」

  ★  ★  ★

総集編20世紀建築の巨匠 (エクスナレッジムック X-Knowledge HOME特別編集 No.)紹介文を読む感じでは、去年X-Knowledge HOMEのムック『総集編20世紀建築の巨匠』で中山さんがやられていたチェルフィッチュの岡田利規インタビューに近い内容なのかもしれない。中山さんがチェルフィッチュの芝居をご覧になったのは、ありがたいことに当サイトの記事がきっかけだったそうで、そこで僕は「事前の精緻なデザインの介在が見えるのが面白い」みたいなことを書いたのだった(050320 (Sun))。

インタビューで中山さんは、事前の「計画」とそこで実際活動する人の「出来事」との関係に敏感な建築家の立場から発言されている。二人に共通するのは、事前に人間の反応を逐一説明できるような「駅前整備計画」的な建築には傲慢さを感じている、という点で、そうではない「計画」のかたちがチェルフィッチュにはありますねという話をそこではしている。

岡田 例えば、こういうせりふをしゃべるということだったり、それに合わせてこう移動するってことを計画するということに関して言えば、僕はデザインしてるんだけど、俳優のしぐさみたいな動きに関しては、僕は動きそのものはほとんどデザインしていなくて、じゃあ何をデザインしてるのかというと、その関係性なんです。その言葉をしゃべるときに、どういう意識の状態であるか、どういうイメージがあるかというのはデザインする。でもその結果として、俳優の身体がある動きをするにいたるわけだけど、その最終形には手を付けていない。最終形にまで手を付けると、結局、パフォーマンスの質が落ちてしまうんですよ。どうしてかと言うと、何はさておきある動きが行われればそれで素晴らしいということはあまりなくて、どういう状態でその人間が動くか、フォルムよりもフォルムを介してその動機が見えるかどうか、それがパフォーマンスの強さを決める。フォルムというのは、フォルムを通してそれを見せるためにあるものでしかなくて、フォルム、外観にこだわると、質は遠ざかる。
(略)
中山 なぜ観客のことを聞いたかというと、どうも役者に指示を出して演技を促すときに、最後のフォルムに至るまでの、その降ろしていき方というか、そういった部分を、稽古や本番中を通じて、ずーっとイメージさせることをかなり厳しく強いている、それが観客席の側から見てもわかる。でも、それをつくっているときには、人に見られてるからこうしようというふうな演出の仕方というよりは、やっぱり、脚本があって、それをフォルムにする過程に自分たちはどういう関わり方ができるのか、そういうことについて一生懸命考えているという感じがすごくして。
岡田 ああ、それはおっしゃる通りだと思いますね。
中山 フォルムだけでも十分面白くできているところがすごいと思うんですけど、そのフォルムになるまでの降ろし方、計画するということの新しいかたちを見た感じなんです。

  ★  ★  ★

上演中のチェルフィッチュ新作『フリータイム』、僕は明日の回を観に行く予定。

20080301

ピンク・フラミンゴが無修正になる日

旧ヘラルドが買ったまま公開されぬままになってたジョン・ウォーターズ先生の最新作『ア・ダーティ・シェイム』がDVDスルーながら発売決定。まずはめでたい。
これは「頭をぶつけると淫乱化する」というほんとにどうしようもない設定でわいわいやってる、それだけでも最高に楽しい映画なんだけど、そこにJW秘蔵の下ネタオールディーズかかりまくり、頭をぶつけるたびに古いエロ映画のフッテージがカットアップされまくり、と師匠のお洒落さ・趣味のよさもいつになく全開ですばらしい。

で、発売元のサイトには何気なくこんな告知も。
※■世界一悪趣味な映画監督ジョン・ウォーターズによる世界一お下劣な作品が、日本一露骨なバージョンで同日発売決定! 
『ピンク・フラミンゴ 無修正特別版』 デックスエンタテインメントよりセル&レンタル、同時リリース!

ついに「無修正」? デックスエンタテインメントのサイトにはまだ情報なし。Amazonには『ピンク・フラミンゴ ノーカット特別版』のタイトルで出ているが詳細不明。

問題になりそうな箇所を順番に挙げてみる。
  1. 露出狂デヴィッド・ロカリーのちんこぶらーり
  2. ディヴァインが「実の息子」に与えるフェラチオ
  3. ディヴァイン一味のホームパーティでの肛門開け閉めダンス
3.は『ピンク・フラミンゴ』といえば真っ先に問題になりそうなシーンだが、現在はビデ倫基準でもアヌス解禁だったはずなのでふつうにOKだろう。2000年代を通していわゆるインディーズAV(ビデ倫以外の機関での審査タイトル)で薄消し・アヌス丸見え傾向が激しくなり、ビデ倫もこれに押される形で、2006年8月審査タイトルからはアヌスもモザイク対象外にしてきたという。
1.は七面鳥の首がくくりつけてあり(どんなだよ)性器露出が中途半端なため、もしかするとOK。
2.が微妙だが、アヘアヘ言ってる割にはペニスが屹立してない(泣)ので「アート」枠でOK、かも。
となるとたしかに日本版・完全無修正ピンク・フラミンゴは、合法的に発売できるのかもしれない。

なんてことだ。JWの愛した、恥ずかしい場所をボカシで執拗にマーキングしつづける「世界一DIRTYなヴァージョン」が絶滅の危機にひんしている……ビデ倫がんばれ!

今朝のニュースはそんな我々にとって朗報かもしれない。

わいせつDVDに審査甘く…「ビデ倫」幹部を逮捕

ア・ダーティ・シェイム US公開バージョン ピンク・フラミンゴ ノーカット特別版

20080226

音楽をことばにする

音楽の注釈に悪魔祓いを施し、述辞的な宿命から解放するチャンスは、形容詞と戦う(口に出かかるあの形容詞を実詞または動詞による遠回しないい方へ逸らす)ことによってつかめるわけではない。音楽に関する言語活動を直接変えようとするよりは、むしろ、言語に供されるような音楽的対象そのものを変えた方がいい。すなわち、音楽の知覚レベル、あるいは、その悟性作用のレベルを修正すること、音楽と言語活動との接辺を転位させることだ。(ロラン・バルト「声のきめ」『第三の意味』p.187)

音楽をことばにするのに行き詰まりを感じるのだったら、アウトプットを工夫するよりインプット時のフォーマットを考え直せば? というような話。つまらん印象批評(形容詞の羅列)しかできないのは「ボキャブラリーが貧困」なせいじゃないぜと。
「この感動」をことばにしようとすると、どうしてもある紋切り型の形容詞におちついてしまい、その結果、自分がいかにファンでそれを好きかという「愛着」のアピールを担保に「この感動」の強度を回復しようとする。でもそれってなんかつまんないし、言いたかった核心をずらしてる感じがするよな……。ちょっと前の本だけど、増田聡『聴衆をつくる——音楽批評の解体文法』はそう感じている人のための実用書と思う。上述のバルトなどをとっかかりに、「愛着のディスクール」から離れるためのヒントがいろいろある。

20080223

showstoppers

showstopper とは、芸能界では「(舞台の進行を中断させるほどの)大喝采を博する」演技や歌、歌手などを指し、コンピュータ業界では「修正しなければリリースできない不具合」を指す。要するに、観ることの快楽の絶頂と、決して人には見せられない致命的な欠陥、という正反対とも言える二つのニュアンスを持つ言葉だ。

個人的には、Busby Berkeleyの伝記が『Showstoppers』と題されているのを知って、英語には洒落た言い回しがあるんだなあと感心したのが最初だった。「あまりに盛り上がりすぎて場が止まってしまう」という、この「最高」と「台無し」の両方が入っている感じ、人間的な努力や理解を積み重ねて「構築」したものがスキを見せる、その瞬間こそが最高なのだという感覚は、なにか娯楽というものの究極を捉えている気がするし、そういう概念をshowstopperと一言に圧縮して言い切る感じもまたよい。

  ★  ★  ★

長らくBiglobeのサーバで運営していた「omo*8」の日記部門をこちらに移転します。これを機に、上述のタイトルをつけてみました。今後ともよろしくおねがいします。