20110525

小沢健二

2010/5/25オザケン中野サンプラザ公演。個人的にソロよりもどっちかというとフリッパーズが好きだったこともあり、当初申し込むつもりもなかった先行抽選、なんとなくエントリーしたら意外な良席が当選してしまい迎えた当日。1階9列目、バンドの顔も見える距離。

今回のツアーに『LIFE』期のバンドと曲で挑むと宣言されたときすぐに思ったのは、懐メロ歌手を見たくないということで、オザケンが団塊ジュニア世代にとっての郷ひろみとなって甘いファンキーソウル歌謡を歌うという絵図は最悪だろうなということ。しかし目の前に現れたのは、三上寛だった……

喉を開きピッチも怪しいまま、とにかく全力で歌い切る痩せっぽちな男。あの生真面目でいっぱいいっぱいな声の存在感があまりに異形過ぎて、ダンサブルな曲でも呆然と立ち尽くし聴き入ってしまう……。すかさず挟まれるMCともポエトリーリーディングともつかぬ鋭い言葉の投げ礫。

もうひとつの懸念。「靴は直しながら履くのがかっこいい」的な、文章などから断片的に漏れ伝わる価値観は、かつてハイテンションな王子様でありトヨタ車のCM歌手だったラブリー小沢の姿とは対極に思えた。そうした自身の過去、日本、大衆音楽や消費の楽しみといったものに、どう対応するのか?

結果は不安を拭ってあまりあるほどで、「この街の大衆音楽の一部であることを誇りに思います」と発言し、カローラIIに乗って買い物に出かけたり、プラダの靴が欲しいだなんて口に出していってみたりする大衆のつつましい楽しみを全肯定したものだった。いや、そういう取れる演出だった。

mixi小沢コミュのセットリストはネタバレだが、あれだけ読んでもなにも伝わったことにはならない。終始異常に熱いことしか起こってない(笑)ので、現行メディア上の小沢をいぶかしがっているひとほど観て欲しいなと思った。自分もそうだったから。

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上記は、とりあえず当日帰宅した後にさっと書いてtwitterに投げた内容を修正したものです。とにかく予想もしなかった内容であったことは事実。すごい熱かった。それもパーティチューンで爆発するような熱さじゃなくて、わりとそれぞれにバラバラな想いを抱えながらもこの時間だけこのひとの存在に見入ってしまう、っていうような、内からじわじわ来る感じの熱さ……。

2000年代に出た、それこそ熱心なファンしか聞いてなかったようなアルバムを聴く限り、この人はもう自分の歌(歌声)を否定してしまったんだ、っていうふうに理解してたんだけど、それがまさかの3時間熱唱ですからね。しかも自分のキャリアでいちばん大衆音楽に接近した(=音楽ツウ以外に届いてた)時代の楽曲を携えて。それで異常な気合で挑みまくった結果、誰も登れないとこに行っちゃった……という感じすらして、あの日は凄いもんを見ました。