先日、「第10回ハロプロ楽曲大賞2011 アイドル楽曲部門」に5曲を投票し、その投票内容に基本的に異存はないものの、ノミネート作が11月リリースまでで主催者の用意したリストからのみ、という選考区分ではこぼれるものも多分にあり、あまつさえ2011年は「アイドル戦国時代」の余波というか第二波という感じでローカルアイドル、マイナーアイドルのパワーを感じさせられた年ではあったので、以下、20作を追加することで個人的なトップ25を記録しておきたい。なお順位は限りなく不同であるが、読者への便宜上番号を振ることとする。
※1〜5位はこちら。
6. Tomato n' Pine / ジングルガール上位時代
「キャプテンは君だ!」のフィリー色で本格的にトマパイを好きになった身としては、12月になってようやく本領発揮と思えるリリースが来た感。スピンアウト的な「雪がふるから…」や「Ain't No Stoppin' Us Now」ネタの「ワナダンス!」含め全曲完璧なEP。
7. JK21 / 天使と悪魔
『JK21やねん』には自分がアイドルポップスに求める楽しさ・かわいさが詰まっていた。チャイムメロやクラシック曲のコラージュで暴走する本作の他、カジくん系ソフトロックギタポ「年上のダーリン」やシャッフルビートの「わたここ」など聴きどころ満載。
8. さくら学院バトン部 Twinklestars / 天使と悪魔
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「成長期限定」小中学生グループにロックの寄る辺なさををぶつけるのが、さくら学院楽曲の面白さ。本体曲「FRIENDS」や重音部の「ド・キ・ド・キモーニング」も素晴らしかったが、中でも沖井礼二のピアノ・ロックに少女の声が乗るバトン部は宝だった。
9. 私立恵比寿中学 / エビ中一週間
ヒャダインこと前山田健一の「渋谷系育ち」の部分というかジャズやソフトロック系の洒落た作曲術が楽しめる傑作。少女たちの声質やキャラクターを十二分に活かした歌が高速ジャズに乗る。これがももクロのボツ曲だったとはなかなか考えさせられる話だ。
10. 3B junior / また明日…
ももクロ、エビ中を生んだスターダスト芸能3部のジュニア部門。サブカル路線で人気が出た2011年ではあったが、こういうケレン味のないポップスのはまる、大手事務所の選ばれし美少女たちのモラトリアムの楽園、みたいな感触は大事にしてほしい。CD化希望。
11. bump.y / Kiss!
bump.yさんには申し訳ないが、これはKARAの作曲家チーム、sweetuneことハン・ジェホ&キム・スンスの「胸キュン80s路線」が久々に味わえる楽曲として大いに楽しんだ。US系の現代的なプロダクションを経由した「ハイスクールはダンステリア」で最高。
12. Sea☆A / Soda sound fountain
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シンガポール出身のメイド喫茶アイドル……らしいけど、永井ルイのポップ・フィーリングが存分に発揮されたテクノポップに、鬼才・畑亜貴ならではの聞きようによってはドエロだけどカワイイ歌詞、というマッチングが最高でないはずがなく。
13. キャラメル☆リボン / 恋のミュージック
2010年発売のチルドレンズフィリー歌謡傑作「虹色」に遅ればせに出会い、その正確かつ完全燃焼系の歌いぶりに恋いこがれていたところ、登場した新曲がまたまた傑作で。音質の悪いYouTubeのライブ映像をとにかくリピートさせられた。リリースが待ち遠しい。
14. Rev. from DVL / LOVE 〜arigataou〜
2011年はLinQを筆頭に、福岡産のアイドルと楽曲に驚かされ続けた1年でもあったが、このアクティブハカタ所属のティーンズグループもキッズソウル度の高い名曲多い。ホーンとストリングスが乱れ飛ぶ本作のほか、「拝啓オヤジ様!」「外環状線」なども良い。
15. ナイスガール トレイニー / 僕らの世代!
つんく♂が音楽担当のWiiの音ゲー『みんなのリズム天国』収録曲、とのことだが、素直な発声といい、ちっちゃい子ががんばってるダンスレッスン風景が即座に浮かんでくるような楽曲といい、芸能スクール系チルドレンズミュージックの傑作だった。
16. Dream5 / 恋の大予言
「恋のダイヤル6700」はキッズなら誰でもやってるしこの子たちもやってて食傷気味だったけど、選曲さえ渋ければフィンガー5曲ってまだまだ最高だなと思わせられた一曲。「天てれMTK」ことNHK教育「天才てれびくんMAX」発、AVEX所属のキッズグループ。
17. SpringBell feat.MIKA / プチョヘンザップ〜こども相談室〜
福岡のNOIR所属こどもラップグループ。イクゾー的プリミティヴなフローがサビでいきなり「エビバリプチョヘンザ! バウンス! バウンス! バウンス!」と解像度が上がるのが面白い。同事務所のJK☆COLORと同じ宅録インディーポップ感にググっとくる。
18. スマイル学園 / Twinkle Star
Boys Town Gang版「君の瞳に恋してる」を下敷きにしたこの曲、なんと過去の地方アイドル(山梨のTIARA)のカヴァーだそうで。東京女子流がAVEXの遺産を再提示するように、彼女たちは00年代マイナー/地方アイドル名曲のリベンジ実験場になってる側面もあるようだ。
19. R☆M / Lovin' You
2011年はNegiccoの全国デビューが決まるとともに、作曲家・connie氏のワークスに正当なスポットライトが当たり始めた年でもあったのでは。武田るい率いるR☆Mの2ndシングルも、connie氏お得意の四つ打ちポップスと伸びやかな歌が素敵だった。
20. CQC's / ゆるふわweekend
福岡アイドルシーンの底力に驚かされた曲のひとつ。超カッコいいダンクラ路線は、なんと松井寛御大のサウンドプロデュースという反則技だった。蓮っ葉なユニゾンが最高。c/w「wanna be your...」もジャムの「A Solid Bond in Your Heart」みたいな名曲。
21. 恵比寿マスカッツ / スプリングホリデー
カイリー「ラッキーラブ」系正調ユーロビートに癒される季節モノ。AV女優やグラドル中心のグループ、という出自を特段強調も否定もせず、素直な発声でかわいく無邪気な絵空事路線をごくごく自然に成立させているのがこのグループの面白いところだと思う。
22. アイドリング!!! / 春色の空
アイドリング!!!は2nd『Petit-Petit』の折衷ポップ感が好きなのだが、それでも『SISTERS』はよくできたアルバムだったと思う。南野陽子「話しかけたかった」系のなんでもないイイキョクである本作のほか、四つ打ち曲「ア・ナ・ロ・グ」もよく聴いた。
23. Dorothy Little Happy / 部屋とパジャマと私
仙台を拠点に3月全国デビューの予定が震災で調子が狂い、しかし8月TIF(東京)出演で「見つけられた」という経緯が2011年を象徴する感じがするグループ。「デモサヨナラ」の魅力は当然のことながら、個人的には本作のようなミディアム曲もよく聴いた。
24. Not yet / 週末Not yet
AKB48関連ユニットでは、壮大なストリングスとホーンにハープまで鳴っちゃう爽やかな四つ打ち曲の本作を一番よく聴いた。こう言っては失礼かもしれないが、さしここと指原さんがこういうピックアップをされる人気メンバーになるとは意外だった……
25. 吉川友 / こんな私でよかったら
なんちゅうフックのある良いメロの四つ打ち曲か! と思ったらサカノウエヨースケ作とのことで納得した、ハロプロエッグ出身のソロアイドル吉川友の3rd。ラストシーンが本人登場のライブになってる映画『きっかけはYOU!』上映も面白かった。
「アイドル戦国時代」そして「ローカルアイドルブームの再燃」とは、結局はAKB48ブームがビジネススキームの普及という形で促した大人の打算に過ぎないのかもしれない。これが継続的なものなのか、それとも「AKB以外は大してオイシクない」と気付いた大人たちが早々に見切りを付けてまたまた総崩れのような冬の時代が訪れてしまうのか、それはまだわからない。しかし、ともかく座して新しいイイキョクを待つのみのいちリスナーとしては、音楽・ダンス・ビジュアル面でのクリエイティヴな魂に才能を発揮する機会がより多く与えられることを、そしてなにより、芸能の道を志す少女たちに幸多からんことを祈るばかりだ。